丹青社では、新入社員教育の一環として2009年からSHELF制作研修を取り入れました。その真のねらいは、ものづくりに必要な知識・技術を身に着けることではなく、SHELF(棚)の制作を通じて、人と人との関係を築き、お互いの持てる能力を最大限に引き出す術を学ぶことです。
新入社員は、デザイナーの意図を正しくつかみ、図面を描き、製作会社の技術力に支えられ、製作上のハードルを乗り越えるために、お互いの想いと条件を擦り合わせながら、SHELFを創り上げます。その制作に全力投球することは、単なる「ものづくり」の体験ではなく、丹青社の社員として必要な「力」を身に付けることです。
新入社員が初めて触れた、ものづくりのための本格的な「思考回路」。その軌跡が2011年9月27日から10月5日まで、六本木アクシスギャラリーにおいて「SHELF展」として展示され、多くの人に「人が成長するためのヒント」を見せてくれました。
SHELF展では、研修の成果物であるSHELFとともに、試行錯誤しながら描き上げたスケッチや図面の数々も紹介されました。そこに垣間見えるのは、社内外のデザイナーや製作会社の方々と繰り返したコミュニケーション、SHELFを創る際に展開された歓喜と苦悩のストーリー、丹青社のものづくりの考え、そして新入社員の成長の軌跡です。人々の新たな出会い、その出会いから生まれる新しいクリエイティブユニットの可能性、より高いシナジーを追い求める人々の熱意———完成されたSHELFはそれらを如実に物語ってくれました。
SHELF研修では、社内外のデザイナーが自由な発想で考えたSHELFを、与えられた予算・納期の中で、図面に落とし込み、独自の技術力を持つ製作会社にお願いし、「カタチ」に仕上げるまでのコーディネートを行います。
SHELFは木と金物が複雑に絡み合い、かつ一体化した構造で、製作には困難が伴い、一筋縄ではいきません。斬新な発想で、独創的な構造と素材を提案するデザイナーと、ものづくりへのこだわりを持つ製作会社の職人さん。その間を新入社員がコーディネートし、両者の能力を最大限に引き出す「製作の鍵」となることで、これまでにない創造物としてのSHELFを生み出します。
デザイナーとの綿密な打合せや製作会社への発注。そのプロセスでは、出来上がるSHELFに対する想いやこだわりを、デザイナーや職人さんと共有し、同じ目線を持たなければ、良いものづくりに結び付きません。
ものづくりは「協業」であることを体感すること。自らの立ち位置を理解し、協業に欠かせない姿勢や振る舞いの基本を身に付けること。そして、お客さまのニーズの実現に向け、課題の抽出と整理を行うことの必要性を理解し、課題解決の手法を追究する思考力を養うことです。これらは、自らの成長の方向性の糸口をつかむことであり、SHELF研修の過程で、新入社員が手にするものなのです。
ときに納期遅れや予算超過など、あってはならない失敗も経験します。しかし研修の最後には、完成したSHELFを、創り出した達成感、数々の失敗、研修での学び等々と一緒に役員にプレゼンテーションすることで、自分達の成長を振り返ります。何を作ったかではなく、その過程で何をしたかが大事であり、成長を促すヒントになるのです。
以下では、SHELF研修を体験した3名の若手社員に、この研修で何をつかんだのか、語ってもらいます。
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私の場合、文系出身で、業界の専門用語に触れることも、図面を描くことも、全てが初めての体験でした。不安を感じながらも、同期のメンバーとチームになって本気で取り組み、時にお互いの意見が相反し、感情的になることもありましたが、ものづくりの醍醐味を味わえました。研修が実践的であったからこそ、ものづくりの緻密さやコスト意識を学べたと思っています。今でこそ当たり前と分かりますが、イイものを創るからといって、いくらでもお金をかけられるわけではないという、厳然とした現実に目を覚まされました。
取り組み始めた当初は、デザイナーの意図を汲みきれないまま、手探りながら、必死に図面を作成していました。作図ソフトの操作方法の勉強から始めたこともあり、単純に図面が出来上がることに満足してしまい、製作予算には全く目が行きません。最初に製作会社からいただいた見積では、予算を数十万円も超過。厳しい洗礼でしたが、何を修正すべきか、何が不足しているのか、まるで見当がつかず、ただ作業の手戻りを繰り返すだけでした。デザイナーの言葉の裏側にある意図をしっかり読み取る必要性、そこに気付いてからやっと前に進めました。
また、ものをつくる工程の予想以上の細かさには驚かされました。木と金物をぴったり合わせるためのミリ以下の調整、ビスを打ち込むことで生じる微妙な金物の歪み、そんな細かなことにも配慮し、求められる意匠を高い品質で実現していくというプロセスには、ものづくりに携わる人々の気概のようなものを感じました。
求められるSHELFができあがるのかと不安に感じていましたが、そんなこだわりのある方々の助けを借りながら、SHELFを完成させた瞬間は達成感と安心感で最高の気分でした。
研修を経て、自分自身がこれから踏み出すべき一歩が明確になりました。それは、営業マンとして、お客様の状況やニーズをしっかりと掴み、お客様の抱える課題をきちんと整理することの重要性です。一日も早くそのコツを自分のものにし、お客様にも社内でも信頼される存在になりたいですね。
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高校時代から木造、RC造と建築を7年間学んできたため、図面を引いてものを「つくる」という研修には自信を持って取り組めました。しかし、根本的に大きな違いがありました。それは「コスト」です。
学生時代の課題では材料費を計算する程度で、ものを加工するコストは全く意識していませんでした。ものをつくるという点で同じであっても、仕事としてものをつくる際には、会社にお金が出入りすることを意識し、会社に残す利益を考えなければなりません。地に足の付いたコスト感覚が初めて養われたという点で、SHELF研修は良い勉強になりました。
また、チームを構成する新入社員の間で意見のすれ違いも多く、お互いの意識を一枚岩にすることにも心血を注ぎました。当初は、どうすればメンバー全員が責任感を持ってリンクできるのか自分なりに考え、提案を繰り返す毎日でした。試行錯誤の末、メンバーそれぞれの責任範囲を決め、その責任者がメンバーや製作会社の方々に指示や依頼を行っていくというスタイルをとりました。その結果、チーム内のコミュニケーションと思考のスピードが飛躍的に向上し、お互いの姿勢が妥協を忘れ、真剣味も増しました。それまでお褒めの言葉を口にすることが少なかったデザイナーから「想像していた以上にキレイな仕上がりになった」と笑顔でコメントをいただけた時には、涙が出そうなほど嬉しかったことを今でもよく覚えています。
研修を通じて、大きく3つのことを学んだと思っています。デザイナーや製作会社、そしてチームのメンバーのサポートを得て初めてSHELFの完成に漕ぎつけたように、「仕事は1人ではできない」ということ。一緒にものを作る人々とお互いに信頼を築くための「熱意」。
そして、常に先を意識して、全体を見据えるための「段取りの重要性」。今でもその学びの全てを大事にしています。
配属された後に、クライアント、協力会社、丹青社がお互いを信頼し、ものづくりに取り組んでこそ良いものが創り出されるということを実感しました。制作職としてお客様の想いを叶えるには、ものがどういった構造でないといけないか、どのように納まるべきか、ミリ単位でこだわる必要があると考えていますが、この研修こそが、丹青社の一制作マンとしての自分の思考の原点になったと強く感じています。
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規模の大きな空間、そして空間を構成する什器まで、幅広く空間に関わる「ものづくり」をしている丹青社に惹かれて入社しましたが、SHELF研修は、最もミクロな部類に携わる研修でした。にもかかわらず、制作に関わる会社や人の数が非常に多いことは驚きで、たくさんの人々の知識やスキルが合わさって、一つのものが完成していくという工程に一々感動していました。
SHELF製作の過程では、自分達の作業が遅れたり、製作会社から図面の不備を指摘されたりと、工程に遅れが生じることも多々ありました。その都度、お客様であるデザイナーに伝えなければなりませんが、伝達の仕方が悪く、お叱りを受けたりもしました。研修中とはいえ、自分たちがSHELFの製作に大きな責任を負っていると、認識させられました。
協力してくださった木工会社や金物会社の方々の熱意にはとても励まされ、心を動かされもしました。私たちが担当したSHELFは、ブラスト加工といって、非常に繊細に溶接された金物に砂を吹き付ける加工を行う必要がありましたが、通常の溶接では強度が不足するため、元の円い形状を保てないという壁に突き当たりました。
そこで、溶接とブラスト加工のそれぞれを担当してくださる2社の職人の方が、それぞれの立場から知恵を出してくださったのです。こだわり溢れる職人魂に助けられ、絶妙なバランスでの特殊な溶接を行い、元の形状を維持したままの加工ができた時には、鳥肌がたちました。
私は研修中、デザイナーの意図を汲み取ることに、全身全霊を注いでいましたが、デザイナーが思い描いたイメージを、ものづくりに関わる全員で共有してこそ、初めて良いものができるのだと強く思い知らされました。デザイナーは常に作り手とイメージを共有する必要があるという、重要なことを学んだと思いますし、今も常に意識していますね。
SHELF展では、研修の成果物であるSHELFとともに、試行錯誤しながら描き上げたスケッチや図面の数々も紹介されました。そこに垣間見えるのは、社内外のデザイナーや製作会社の方々と繰り返したコミュニケーション、SHELFを創る際に展開された歓喜と苦悩のストーリー、丹青社のものづくりの考え、そして新入社員の成長の軌跡です。人々の新たな出会い、その出会いから生まれる新しいクリエイティブユニットの可能性、より高いシナジーを追い求める人々の熱意———完成されたSHELFはそれらを如実に物語ってくれました。
SHELF研修では、社内外のデザイナーが自由な発想で考えたSHELFを、与えられた予算・納期の中で、図面に落とし込み、独自の技術力を持つ製作会社にお願いし、「カタチ」に仕上げるまでのコーディネートを行います。
ときに納期遅れや予算超過など、あってはならない失敗も経験します。しかし研修の最後には、完成したSHELFを、創り出した達成感、数々の失敗、研修での学び等々と一緒に役員にプレゼンテーションすることで、自分達の成長を振り返ります。何を作ったかではなく、その過程で何をしたかが大事であり、成長を促すヒントになるのです。
