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表現者たちの飽くなき探求 -こだわりが生んだ魅力の空間-

ソニー歴史資料館(オープン:2007年4月) Morisia(モリシア)津田沼(オープン:2008年3月) 札幌パークホテル(オープン:2006年12月)
〜2008年 〜1998年 〜2005年

~こだわりの結実~その先を見つめて~

司会:「シーンメイク」を完成されたということですが、その後は何に挑戦されていらっしゃいますか?

出原:私は同じことを繰り返すのが嫌いで、何事も一期一会が基本だと考えているのですが、これまで丹青社が手掛けていない類の仕事をしてみたくて、ホテル業界にアプローチしました。そして私の「シーンメイク」の考えに共感してもらい、手掛けたのが『札幌パークホテル』です。デザインのディレクションに始まり、従業員のメイクからユニフォーム、サービスに至るまで、幅広く提案しています。

札幌パークホテル

司会:ホテルについては、空間デザインの枠を超えて、かなり幅広くプロデュースをされたということですね。

出原:丹青社の強みは、いろいろな仕事を手掛けながらも基本はきちんと空間デザインに軸足を置いていることだと思っています。空間デザインの善し悪しを熟知しているので、その枠を超えても的確な判断ができるのです。

ソニー歴史資料館

洪:私たちの仕事は、クライアントと向き合い、お互いに切磋琢磨しながら、面白いものを、また、納得できるものを仕立て上げることだと考えています。そして、それこそが真の意味でクライアントと我々とのコラボレーションだと思います。
そういう意味で、『ソニー歴史資料館』は、クライアントとの息がピッタリ合った好例の一つです。恵まれたのは、ソニースピリットという絶対外さない軸をクライアントが持っていたことです。いろいろな素材を組み合わせて、そのソニースピリットをいかに物語として表現するか、ということを何よりも大切に考えました。お互いの信念をぶつけ合ったりもしましたが、最終的にいいものが生まれたと思います。これこそが私が考えていた「narrative」デザインです。
空間を百科辞典のような情報の羅列に終わらせず、利用者に語りかける空気感を醸成するために、利用者のマインドを加味しながら考えていくわけですが、クリエイターはそこを楽しまなければいけないし、楽しむことができると思っています。

朴:その点、商業施設は実利を追求しなければならない面があります。カタチだけでは良い売場になりませんから、シーンとか空気感のある、何よりも買い回りのしやすい空間をつくりあげることが大切です。その場所にふさわしいデザインで、利用者に支持される空間づくりが大切だと思っていますが、デザインも最終的にはプロダクトですから、クライアントの評価があって浮かばれるということです。クライアントから「あれは良かった」という台詞を言ってもらうだけでも、すごく嬉しいわけですよね。
私は、若いデザイナーには「一度仕事をいただいたクライアントから、次に個人名で指名されなかったら、それは評価されてないということだ 」と言っています。

司会:実際の物件を手掛ける際には、若手のデザイナーたちへはどんな指示を出されていますか?

朴:立地特性やMD計画を踏まえた施設コンセプトから逸脱していなければ、あまり細かくは言いません。例えば、07年にオープンした『エキュート立川』でディレクションをしましたが、多層階で、改札の中と外にわたって施設が続いていているという形態は、エキュートとしては初めてのタイプでした。そこで駅コンコースから上の売場が見えた方が効果的と考えて、面積は減るけれど吹抜けを提案し採用され、コンペに勝つことができました。
後は骨格に従い、売場の中身にあわせクライアントとのキャッチボールで、デザインを深度化していくわけですが、そこはそれぞれのデザイナーの感性を活かしながらコンセプトから外れていないかをチェックしていくという感じです。その後の『モリシア津田沼』でもディレクションをとりましたが、多くのデザイナーへの指示という意味では、基本は同じでしたね。

Morisia(モリシア)津田沼

司会:最後に、皆さんの立場から、今後の新入社員に対して期待することを一言ずつお願いします。

朴:クライアントに対して空間の提案をしていくために必要なのはこだわりですね。強いこだわりを持っていてはじめて、しっかりとした空間が実現できるのです。そのためには、本を読んで、世界観を広げ、まず自分なりの価値観を築いてほしいですね。

出原:こだわりの空間づくりをずっと続けたいというエネルギーを持っていてほしいですね。丹青社はそのエネルギーを活かしてくれます。それから、自分が興味を持ったものがあれば、徹底的に分析したほうがいいですね。自分自身を分かることで、自分のこだわりが何なのかが見えてきます。

洪:空間はデザイナーからのメッセージそのもの。やはりこだわりを持たなければ、メッセージは響くものになりません。空間に接したときには、そのメッセージをつねに凝視する癖をつけてほしい。ただ楽しむのではなくて、対話することでメッセージを嗅ぎ取る、若いうちからそんな見方を身につけてほしいですね。

~司会者後日談~

時代を先取りしつつ、クライアントとの向き合い方も、仕事のスタイルも、三者三様にタイプの異なるクリエイターたちですが、共通点が一つありました。それは独自のこだわりを持って取り組んでいること。同時に、そのこだわりを貫くためにはクライアントの共感はもちろん、本人の努力や熱意、またスタッフに恵まれなければ実現できないことも、話の端々から垣間見えた気がします。

撮影:フォワードストローク、新良太、株式会社グランビスタ ホテル&リゾート

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