
『小江戸蔵里(こえどくらり)』は埼玉県川越市にある旧鏡山酒造の建築物を川越の名産品や食を提供する場に再生した施設です。丹青社では酒蔵再活用にあたっての法的な調整から、施設ロゴや空間デザインを含むショップアイデンティティの構築、地元有名店の誘致・商品計画までトータルにお手伝いをしました。国の登録有形文化財(文化遺産)が持つ魅力と川越の魅力。2つの魅力を最大限にひきだす施設のブランドづくりに向けて、さまざまな課題を乗り越えてきたプロジェクトをご紹介いたします。

「市民運動により保存されることになった文化遺産を川越の物産を楽しめる名所として観光に活用したい」という川越市の要望で、事業者公募/企画立案コンペが行われました。
丹青社の「観光客だけでなく地元の人も楽しめる、川越ならではの商品のワンストップショッピングができるショーケース的な商業施設にしてはどうか」という提案が評価され、丹青社が企画立案を担当した「(株)まちづくり川越」様が事業者に選定、プロジェクトはスタートしました。
幅20m×奥行き20m×高さ10mという通常よりも大規模な蔵を鑑賞するだけでなく、食事・回遊しながら快適に空間を楽しむ蔵へ再生するために最初に向かい合った課題は「既存不適格の建築物」でした。

現行の法規では既存不適格の建築物の中で火気を使用する、密閉されていない効率の悪い空間の中で空調と給排気を整備する、そして法的に明確な前例がない中での調整。お客さまと一緒になってデザイナーやプロジェクトマネジメントの担当者が調整にあたり、ここを訪れる人が快適に楽しめる空間を実現しています。空間デザインの面では「補強のための新構造材と既存の古い構造材を分離して可視化する」などの制約を素直に受け入れ、対比的にパフォーマンス厨房はモダンに見せるなど、文化遺産としての使い込まれた風合いを活かしたモダンな空間を実現しています。
また、このプロジェクトの特徴のひとつとして、店舗の誘致、商品・仕入計画からデザインまで「売り場の編集」をひとつの流れで丹青社が担当していることがあります。特徴やサイズ、数量の異なる商品郡に対して、区画や什器、棚1枚など規模の異なる「売り場」をデザイナーが計画段階で密接に連携をとりながら落とし込むことで、商品の特徴をいかしたショッピングを楽しめる空間になりました。

「小江戸蔵里」の施設名は市民公募で決定しました。丹青社では決定した名称をもとに、ロゴマーク、アプリケーション(紙袋、値札、バナー類)、HPなど、あらゆるショップアイデンティティを構築するためのデザインを担当しています。担当者は社内コンペで決定。「暮らしの延長上にある観光地・川越」というコンセプトで、よりモダンで都会的なセンスを取り入れることによって、地元の人を含めた新しい客層にも小江戸蔵里に親しみを持ってもらえるようなデザインを実現しました。
小江戸蔵里は初年度50万人の来場見込みに対し予想を上回るペースで来場いただいています。観光客だけでなく川越に住む地元の人が喜んでくれている、との声もいただいています。今回、川越市にとっても指定管理者制度を利用することで、地場産品を見直す機会になり、また「指定管理者制度」が文化施設だけなく商業施設でも活用可能な地域振興をしながら継続可能な事業として展開していけるよい事例となりました。



上から「おみやげ処(明治蔵)」、地元野菜 などを楽しむことができる「くら市場(昭和蔵)」、鏡山酒造の日本酒と和食をたのし むことができる「まかない処(大正蔵)」、 明治蔵の中の「kura cafe」。
撮影:ナカサ&パートナーズ