【プロジェクトインタビュー】
ちばなクリニック 健康管理センター
病気の早期発見につながる人間ドックは、自分の健康と向き合う大切な機会です。その時間をより快適に、
そして豊かに過ごすための工夫を凝らした、“行きたくなる健診センター”づくりを進める丹青社の事例をご紹介します。
沖縄県中部地域の中核を担う医療機関である「ちばなクリニック」において予防医療を担ってきた健康管理センターが、拡張改装を経て2022年6月にリニューアルオープンしました。その経緯について、丹青社プロジェクトマネージャーの芳原(沖縄営業所)とデザインディレクションを行った猪瀬(デザインセンター/写真右)が、健康管理センター センター長の砂川様(写真左)、事務長代理の奥平様(写真中央)とともに振り返りました。
(※所属・肩書は取材当時のもの)
<事例概要>
2002年の開院以来、予防から治療、そして介護まで幅広い医療サービスを手がける「ちばなクリニック」。その柱の1つである予防医療を担うのが、院内に併設された健康管理センターです。4階フロアの全面を健診エリアに拡大するにあたり、機能性とデザイン性を両立さ、安らぎの空間で受診できる環境を整え、地域の皆様の健康寿命への寄与を目指しました。
<事業主>社会医療法人 敬愛会 <所在地>沖縄県沖縄市知花 <オープン>2022年6月 <業務範囲>デザイン・設計、制作・施工
※PDFでニュースレター(2023/6)を見る
沖縄ならではの開放的でリラックスできる、
地域に愛され、選ばれる空間づくりを。
【1】全国の健診施設づくりで培ってきたノウハウとデザイン性に期待。
芳原 ちばなクリニック様が位置する沖縄県中部地域では、人口増加が続いている一方、近隣に健診を受けられる施設が少なく、働く世代のニーズに対応できていないという課題を伺いました。
砂川 近年、当センターの受診者数は増加を続けており、特にニーズの高い胃カメラ検査については「いつも予約が一杯で受けられない」との声もいただいていました。そこで、当センターのある4階にあった通所リハビリの移転に伴い、1.5倍の規模に拡張改装することにしたのです。
奥平 拡張改装工事を計画するにあたっては、今までお付き合いのあった地元の設計事務所など数社に声をかけていましたが、タイミングよく丹青社さんからDMが届き、コンペに参加いただくことになりました。
芳原 当社では近年、予防医療に対する社会的ニーズの高まりを背景に、健診施設での実績の積み重ねによる知見やノウハウを、広く全国で役立てたいとの想いがありました。DMをご覧いただいて、どんな期待感をお持ちいただけましたか。
奥平 東京に本社を置き、全国で活躍されている会社だけあって、実績が豊富で、デザイン性も高い。是非、相談してみたいと思いました。沖縄にも営業所があるとのことで、早速、連絡したところ、非常にフットワーク良く対応いただけたのもありがたかったですね。
芳原 お話を伺っていて、「沖縄を代表する健診施設になる」「地域のニーズに応えていく」という強い想いを感じたので、こちらも全力でお応えしたいと考え、所長を筆頭に営業所を挙げて体制を整備しました。
奥平 コンペまでの数カ月の間に、一番多く打合せしたのが丹青社さんでした。熱意もさることながら、こちらが思い描いていた理想像をしっかりと把握した上で、コスト面も含めて現実的な計画に落とし込んでもらえたので、実際の提案が非常に楽しみでしたね。
【2】安心して健診を受けられ、リラックスできる空間づくりを目指す。
奥平 提案いただくにあたって提示したポイントは「受診環境・働く環境の整備」「受診者様や職員の動線改善」「内視鏡検査の充実」「感染症対策の実施」の4点でした。すべてを具体化するのは大変だったかと思います。
猪瀬 私もオンラインで打合せに参加しましたが、当初より非常に明確にお考えを整理されていることに驚きました。特に動線については、ベッドの配置など細かい所まで練り込まれたものをご提示いただいたのは初めてでした。
砂川 1.5倍の規模になるだけに、動線をしっかり検討しておく必要があると考えていました。自分を含めた職員や受診者様の動きをシミュレーションしながら、最適な配置を考えていましたので、イメージ通りに具現化してもらえてありがたかったですね。
猪瀬 提案にあたって重視したのは、地域の皆様に愛され、選ばれる施設にすること。そこで、医療施設というよりも別荘のようにリラックスできる空間を目指し、「ちばなヴィラ」というコンセプトを掲げました。特に受診者様がセンター内を歩く際の“空間の見え方”を意識し、沖縄ならではのマテリアル「琉球石灰岩」を採用するほか、メリハリの利いた照明計画により、砂川様が描いていた理想像に近づけられたのではないかと思っています。
砂川 プレゼンでパースを見た時は圧倒されました。見た目はもちろん、効率的な空間配置によって施設のキャパシティを高めるとともに、動線や感染症対策などへの配慮も行き届いていて、満場一致で丹青社さんにお願いすることにしました。
【3】コロナ禍に加えて、運営しながらの施工という難題に挑む。
奥平 施工にあたってお願いしたのは、休診することなく工事を進めること。実際に工事を行う丹青社さんには、さぞ苦労をおかけしたと思います。
芳原 地域医療を支えるという使命からすれば当然のことです。仮設運営しながらの工事にあたっては、スケジューリングや工区の整理、施工中の制作スタッフの体制整備など、高いレベルが要求されます。そのため初期段階から制作担当者も打ち合わせに参加し、制作の視点で問題点を事前にクリアにすることで、スムーズに進行できました。また、設計打合せに関してはコロナ禍でリモートでの対応がメインになったため、ちばなクリニック様に不安やストレスをおかけせずに進められるよう、かなり念入りに準備を行いました。
奥平 細かい意匠や素材感などは、やはり対面で実際に見せていただかないと伝わらないこともあるので、芳原さんはじめ沖縄営業所の方々に足を運んでいただき、こちらの意図や想いを設計の方々に伝えてもらえました。おかげで素晴らしい出来栄えになったと感じています。
猪瀬 私たちにとっても、リモートだけでここまでお互いの意識を共有し、納得いただける空間を実現できたのは、貴重な経験でした。今回、オンライン活用により、遠方のクライアント様にも当社の提案をお届けできたことは、今後の自信にもつながりました。
砂川 空間の使い方や機能性については提案段階で納得できていたので、あとはデザインや施工のプロにお任せしておけば安心だと思っていましたが、いざ完成すると想像以上に素晴らしく、品格や落ち着きのある、まさに目指していた空間で、受診者様からも好評をいただいています。新しくなった空間に負けないよう、今後もサービスの質を高めていきます。
【COMMENT】
ちばなクリニック 健康管理センター 主任 シーラ千穂様
スタイリッシュで非日常感を楽しめる特別な空間に生まれ変わったことで、職員は笑顔に溢れ、受診者様からもお褒めの言葉をいただいています。リラックスで来る広々としたホールのなか、天井まである飾り棚の装飾を鑑賞される受診者様の姿なども見受けられ、診察待ちの間の喧騒感もなくなりました。完全に仕切られた女性検診エリア、使いやすくて清潔感があり緊張が和らぐ採血室、異性の付き添いも一緒に入れる多目的更衣室の新設など、私たちのこだわりを最高の形で実現してもらえたことに深く感謝しています。
株式会社丹青社 デザインセンター
デザインディレクター 小出美希(左)/デザイナー 藤原祥子(右)
本件のデザインでは、沖縄らしさの表現と同時に「女性ならではの視点」を重視。受診される方々がポジティブな気持ちになれるよう、サロンのような雰囲気を目指し、女性エリアは肌に近い温かみのあるカラー、内視鏡エリアは海を彷彿させる爽やかなカラーで構成するなど、エリアごとの住み分けを意識しました。一方で、増床を重ねて使いづらくなっていたレイアウトを再整理し、スタッフが働きやすい職場づくりにも気を配っています。