丹青社は、運営する日本最大級のミュージアム情報サイト『アイエム[インターネットミュージアム]』が行った『ミュージアム利用動向2022』を2022年12月9日(金)に発表しました。
※今回調査対象となるミュージアムは、博物館、美術館、科学館、動物園、水族館、植物園など、「知識の体系」があり展示手法が「学ぶ」ことを主体にしている施設のことを指します。
調査の背景
2020年から感染が拡大した新型コロナウイルスにより、多くのミュージアムが休館を余儀なくされました。その後、多くのミュージアムが再開こそしたものの、外出そのものへの懸念や予約制の導入などもあり、コロナ禍の前後でミュージアムを取り巻く環境は激変しました。
一方で、観光振興と地域活性化の両面において文化の振興は期待されており、文化施設に求められる期待値、役割は以前よりも大きくなっています。
それらの背景も踏まえた中で、一般のミュージアム・ファンによるミュージアムの利用動向を総合的に調査することで、今後のミュージアム業界への一助となることを目指しました。
調査結果サマリ
コロナ禍の前後でミュージアムを訪問する回数は減少傾向。入館の予約制も不便になったと考える人が多い。一方で「並ばなくても入れる」など利点をあげる人も見られる。訪問頻度が高い人と低い人では、行動に差異が見られる。
※すべての調査結果は下記からご覧いただけます。
調査結果ページ:https://www.museum.or.jp/static/museumfanresearch2022
1)ミュージアムに行く頻度の変化
Q. コロナ禍の前と後で、ミュージアムに行く頻度は変わりましたか?
【その理由】
[減った]
・出かける機会自体が無くなった。
・仕事がリモートワークになったので、仕事終わりに寄る機会が減ったため。
・休日の外出を減らすようにしているため。
[増えた]
・会話を伴わないので安全。
・人の多いアミューズメント施設を避けるようになったから。
・日時指定によって混雑を避けることができるようになったため。
[変わらない]
・もともとそれなりに通っているため。
・対策がきちんととられているので、変わらず行っている。
・マスクをして鑑賞できるので。
【解説】
・全体では「減った」が44%と、コロナ禍によるミュージアム訪問機会の減少は明らか。
・一方で「増えた」も13%。「ミュージアムは会話を伴わない安心な施設」という肯定的な見方も。
・ユーザーのタイプで分析すると、訪問頻度が高い層より、訪問頻度が低いライトユーザーの減少幅が大きい。
2)予約制度の受け入れ状況
Q.コロナ禍でミュージアムも予約制が増えました。どう思いますか?
【その理由】
[便利]
・決まった時間に行くという動機づけでその日のスケジュールが立てやすくなった。
・長時間並びそうと諦めていた展覧会にも以前より気軽に足を運べるようになった。
・ミュージアムを訪れる前に予定が組める。
[不便]
・思い立った時に行けない。その日の天気で行くことができないから。
・急に時間が空いた時に見に行けないため。
・旅先で突然行きたくなる事もあるので。
[どちらでもない]
・ふらっと行けないのは不便だけど、混雑が分散するのはいいと思う。
・人数制限されて安心だと思うが、予約の時間にちゃんと行けるか心配。
・便利であるが、人気の展覧会に行けなかった経験があるため。
【解説】
・41.6%と「不便」が最多も、33.1%と「便利」も一定の評価が見られる。
・思い立った時に行けなくなったことにマイナスイメージが多い一方で、以前なら長時間並んだ展覧会も、予約さえ取れていれば入れるなど、予約制ならではの利点をあげる人も。
3)ミュージアムでの楽しみ
Q. ミュージアムで楽しんでいること、あったら体験したいことは?(複数回答)
【解説】
・全体的に希望が多いのは「写真撮影」「作品解説・ガイドツアー」「無料鑑賞日」。
・頻度が高い人は「作品解説・ガイドツアー」が最多。より深い鑑賞体験への欲求が強い。
・訪問頻度が低い人は「写真撮影」が最多。写真をSNSにアップしてのソーシャルコミュニケーション・思い出作りなどを求めている。
4)ミュージアムに行く動機
Q. あなたがミュージアムに行くきっかけは何ですか?(複数回答)
【解説】
・全体では「館の公式サイト」「情報サイト」「ミュージアム内でポスターやチラシを見て」が多い。
・頻度が高い人は「ミュージアム内でポスターやチラシを見て」がトップ。好きなミュージアムに出かけて、そこで新たな展覧会を見つける。すなわちミュージアム鑑賞から次のミュージアム鑑賞へ、の流れが見て取れる。
・週1回〜半年に1回程度までは、頻度が落ちるにつれてCMや交通広告などの比率が高まる。
・年に1回程度のライトユーザーは、広告による影響が小さく、Twitter・InstagramなどSNSがきっかけになる比率が高まる。この層を動かすには、別のアプローチが必要。
【全体解説】
コロナ禍はミュージアムファンの行動にも影響を与えていることが明らかになりました。そもそもミュージアムはその特性上、感染が広がりにくい環境ですが、ミュージアムの接点が少ない人はそれがイメージしにくいのか、足が遠のいている現状は残念です。混雑が少なく、じっくり楽しめるという点では、むしろ絶好の機会です。アイエムとしても親しみやすい情報を多く取り上げて、ライトユーザーの呼び起こしをはかりたいと思っています。

■ 解説者:古川幹夫(アイエム編集長/丹青社 企画開発センター)
1966年愛媛県生まれ。1990年株式会社丹青社入社。本社デザインセンター、(株)JDNなどで空間デザイン、オウンドメディアの立ち上げ・運用等に従事。2011年より現職。年間約200カ所のミュージアム取材を継続中。
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<調査概要>
調査期間:2022/11/8~2022/11/18
調査対象:アイエム会員
有効回答数:770名
調査方法:インターネット調査
<引用・転載時のクレジット記載のお願い>
本リリース内容の転載にあたりましては、「アイエム[インターネットミュージアム]」の表記をお使いいただきますようお願いいたします。

■ アイエム[インターネットミュージアム]とは
アイエムは「Life with Museum(ミュージアムのある暮らし)」をコンセプトに運営している、日本最大級のミュージアム情報サイトです。
ミュージアムの施設情報や企画展・イベントなどの情報をご紹介しているほか、独自の取材レポート、学芸員の募集情報、展覧会のチケットプレゼントなど多彩なコンテンツで、広く全国のミュージアムファンにご利用いただいています。
アイエム[インターネットミュージアム]:https://www.museum.or.jp/
ニュースリリース
日本最大級のミュージアム情報サイト「アイエム」、2022年のミュージアム利用動向を発表
~コロナ禍で進んだライトユーザーのミュージアム離れ。集客のカギはSNSか。~
※お知らせおよびニュースリリースに掲載された内容は発表日現在のものです。
その後予告なしに変更されることがありますので、あらかじめご了承ください。