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イベントレポート
『異業種デザイナーと考えるデザインの拡張』

2024年11月、「デザインでひらく、デザインをひらく」をミッションにサービスデザイン領域で活躍する株式会社コンセントさまとの勉強会『異業種デザイナーと考えるデザインの拡張』を開催しました。異なる領域で事業を展開しながらも、デザイナーの価値を拡張・アップデートするためにさまざまな取り組みを推進している両社。当日はそれぞれから4名のデザイナーが登壇し、「自身のアップデート」をテーマとしたプレゼンテーションを通じてディスカッションを交わしました。本レポートでは、勉強会の内容をハイライトでお届けします。

株式会社コンセント


大﨑 優 取締役/デザインストラジテスト・サービスデザイナー(前列右)


叶丸 恵理 UX/UIデザイナー、デザインストラジテスト(前列右端)


川原田 大地 サービスデザイナー(後列右端)


岡本 亮 サービスデザイナー(後列右)



株式会社丹青社


那須野 淳一 デザインセンター シニアクリエイティブエキスパート(前列左)


安元 直紀 デザインセンター チーフクリエイティブディレクター(後列左)


眞田 章太郎 デザインセンター クリエイティブディレクター(前列左端)


鶴岡 信人 デザインセンター クリエイティブディレクター(後列左端)

空間とサービス、それぞれのデザイナーが語るアップデート

大﨑 デザインの役割や定義が広がっている中で、当社としてもデザイナーのスキル拡張や提案価値を高めるための取り組みを行ってきました。本日は「自身のアップデート」をテーマに、丹青社さんとともにディスカッションができたらと思っています。

那須野 丹青社は基本的に空間に軸足をおいており、私自身は新しい体験価値を生むための空間をさまざまな分野で手掛けています。その中で、キャラクターデザインやイベントの脚本・演出など、一見すると空間とは関係のないようなものも提案してきました。それは、お客さまの事業が成功するためなら、できることは何でもしようと思うようになったからです。逆に言えば、お客さまのビジネスの成功に寄与しない提案は、どんなに格好良いデザインだろうと意味がない。そう思うようになったことが、私のアップデートです。

安元 アップデートの多くはピンチに陥ったときに起きると思っています。これまで、私自身も多くのピンチを経験しました。2011年当時、まだ丹青社内に事例のなかったワークプレイス領域のデザインを初めて手掛けたり、設計要件のない課題に対してその空間で生まれる活動から逆算した提案をしたり。コロナ禍以降は、顧客の価値を可視化するための空間とは何か、現在進行形で自問自答を繰り返しています。ピンチに対して自分なりの解答を見出すことがアップデートにつながるのではないでしょうか。

岡本 私は2007年にエディトリアルデザイナーとして入社し、当時は雑誌を中心とした紙媒体のデザインに携わっていました。大きなアップデートとなったのは2014年にサービスデザイナーへジョブチェンジしたこと。そのきっかけは、自動車のインパネのUIを設計する事業開発プロジェクトに携わったことでした。これまで培った情報整理などのスキルが別の領域に活かせることに気づき、自らの手で誌面をデザインする仕事から、さまざまな人と共創しながらサービス生み出す仕事へ。今もさまざまな苦心はありながら、挑戦を続けています。

鶴岡 私からは、あるお菓子ブランドとの出会いによって生まれたアップデートについてお話しします。もともとは店舗デザインの依頼でしたが、ブランド価値を高めるためにパッケージやショッパーのデザインなども合わせて提案させていただき、とても喜んでいただけたんです。そこから継続的なお付き合いが始まり、他のブランドを立ち上げる際にはネーミング段階からブランディングに包括的に携わらせていただきました。空間づくりを生業とする丹青社として、空間を取り巻く体験全体をデザインすることの大切さを学んだ案件になりました。

叶丸 安元さんの「アップデートはピンチの時に起きる」という話は、個人的にとても共感しました。私自身も、はじめてのことに取り組むたびにアップデートされてきたと感じています。コンセントに入社してはじめてサービスデザインに携わったり、はじめてチームマネージャーを経験したり。その中でアップデートには3つのポイントがあると考えています。できるにはどうするかを考えること、仲間を見つけて協力し合うこと、小さな成功体験を積んで波に乗ること。これからは、人材開発・組織開発支援にてクライアントと協働しながら、組織の成長や変革を目指していきます。

眞田 私からは、ある温泉宿を全国展開するお客さまとの案件についてご紹介します。既存のイメージから脱却し、上質な体験を提供するリゾート施設へのリブランディングを行っていく中で、その旗艦店の空間からブランドロゴ、館内着までトータルプロデュースさせていただきました。これがお客さまの中で成功体験となることで、お客さまの依頼が“営繕”から“デザイン”に変わっていったんです。この経験から、お客さまを巻き込むことで一緒にプロジェクトをアップデートしていくことの重要性を学びました。そしてこれからは、ジャンルを問わないクリエイターとして自身をアップデートしていくことを意識しています。

川原田 私はメーカーの技術職からキャリアをスタートし、事業会社からデザインコンサルティング会社を経てコンセントに入社しました。働く環境を変えるという能動的なアクションを通じて自身をアップデートしていく中で、親族との死別や子供が産まれたことをきっかけに、自身の仕事は誰かの「生きる」につなげられているのか、その先の未来に資するものになっているのかを問い直すように。これは受動的なきっかけによるアップデートだったと思います。そしてこれからも謙虚に学ぶこと、好奇心の火を絶やさずにいることを心掛けつつ、デザインの先にある人・地域・社会・未来を見据え、そのあり方を探り、問い続けていきたいと思います。

大﨑 丹青社の皆さんの話の中で、「体験をデザインする」という言葉が印象的でした。コンセントが体験をデザインする時は、感性的な面はもちろんのこと、タイムラインの中でタッチポイントごとにどのようなKPIを設定するかというような、定量的な面も含めたデザインであることも多いです。線的な発想の中でデザインするわけですね。対して丹青社さんは空間的な広がりの中でユーザーの定性的な感情を複層的にデザインしていることがすごく興味深かったです。あらためて本日はありがとうございました。

勉強会を終えて

大﨑 デザイナーの価値を拡張・アップデートしていく過程で忘れがちな、デザイナーの「真の価値」について、あらためて気付かされたように思います。個人的には美大に戻ったような感覚で、それぞれ異なる分野にいながらも、根本にある芯は同じなんだなと。デザイナーの価値をもっと上げていくために、異分野の知見を統合して創ることと、時代の変化に合わせて壊すことのバランスをともに追い求めていきたいと思います。

那須野 業務が効率化を求めてどんどんシステマチックになっていく中で、デザイナーの仕事にどんな価値を付加していくのか。顧客のビジネスを成功に導くために本質的に必要なことを考えられるデザイナーを増やしていくべきだとあらためて実感しました。今回の勉強会にとどまらず、もっと両社のブレストやディスカッションを重ねることで、化学反応が起きることを期待しています。

※PDFでニュースレター(2024/11)を見る

※記載されている情報は、取材時点のものです。その後予告なしに変更されることがありますので、あらかじめご了承ください。

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