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【Introduction to Solutions】
ディスプレイ業におけるDX推進の現在地。vol.2

【Interview】専門店・チェーン店づくりにおけるBIM活用の現在地

建築プロセスにイノベーションを起こす画期的なワークフローと⾔われる「BIM」は、ディスプレイ業においてどのような役割を果たし、どのような効果をもたらすのか。DX推進にフォーカスしたニュースレターのvol.2となる今回は、全国展開する専門店・チェーン店における店舗づくりで、どのようにBIMが活用されているのか。プロジェクトの担当者にインタビューしました。

鶴岡のポートレートと事例画像「LAKOLE」
鶴岡 信人(つるおか のぶと)

デザインセンター
コマーシャルデザイン局 チーフデザイナー

2012年丹青社入社。専門店を中心に担当。新規ブランドの立ち上げにコンセプトワークから携わるなど経験多数。社内のBIM推進担当として若手をけん引し、リーダー的存在として活躍している。
【担当プロジェクト】
LAKOLE(株式会社アダストリア):
全国のショッピングセンターを中心に国内に71店舗(2023年10月時点)展開する衣服・生活雑貨などの日用品を扱うブランド。


小野のポートレートと事例画像「ANYTIME FITNESS」
小野 浩 (おの ひろし)

デザインセンター
ストアデザイン局 クリエイティブディレクター

1996年丹青社入社。主として商業施設全般を担当し、 現在は専門店、チェーン店を中心に活躍。一級建築士として建築設計にも携わる。常にクライアントに寄り添う姿勢を大切にしている。
【担当プロジェクト】
ANYTIME FITNESS(株式会社Fast Fitness Japan ※):
世界28の国と地域で約5,000店舗展開しているフィットネスクラブ。 ※FFJは日本国内展開のマスターフランチャイジー

BIM(Building Information Modeling)とは

3Dモデルに情報を付加し、設計だけでなく運用にも活用するワークフローのことです。コンピューター上に作成した3次元の建物のデジタルモデルに、コストや仕上げ、管理情報などの『属性データ』を追加することで、建築物のデータベースが生成され、それらの情報は、建築の設計、施工から維持管理までのあらゆる工程で活用できます。建築関連業務の効率化、建築業界の生産性向上・働き方改革に寄与するサステナブルな取り組みであり、カーボンニュートラルにもつながることから、BIMの義務化が世界的に広がっています。日本においても、2023年1月より国土交通省が『建築BIM加速化事業』を新設するなど、BIM推進支援の施策が行われています。

※ニュースレター(2023/10)をPDFで見る

【1】専門店・チェーン店設計ならではの課題解決にBIMを活用。

丹青社が2022年9月にAutodesk社と戦略的提携を発表して約1年。2023年10月現在、BIMソフト『Revit®』の利用環境はデザイン部門で100%、制作部門でも53%まで拡充しています。丹青社が空間づくりに携わる専門店やチェーン店のプロジェクトは、日本全国、年間で数十店舗の出店にも設計対応することがありますが、BIMの導入以前から課題に感じていたことはありますか?

  • 鶴岡:什器や器具(パーツ)を含めて視覚的に理解しやすいよう、図面だけではなく3Dへ展開するにあたって、その作業に時間を費やさなければならないケースがありますね。

  • 小野:出店の与件はすべて異なる上、店舗展開が速いプロジェクトが多く、個人の経験を踏まえて迅速に判断せざるを得ない調整が発生します。全国の店舗設計を行うので、同じ担当者が各店舗へ出向いて直接確認することもあり、大きな負担になっていました。

品質を担保しながら出店スピードや出店場所に合わせて確実な対応を行うため、人と時間のどちらにも負荷がかかっていたんですね。業務改善につながるといわれるBIMですが、実際にプロジェクトに導入してみて感じた課題やメリットがあればお聞かせください。

  • 鶴岡:課題は、モデル作成のためのファミリ(※1)化や各パーツのリスト化など、最初の仕組みづくりに時間がかかることでしょうか。導入直後はBIMソフトに慣れていないこともあり、ソフトに精通した有識者に何度も質問をしながら進めていました。汎用性の高いファミリのテンプレート(※2)をまとめ、店舗特有のファミリと一緒に使いながらプロジェクトを推進できれば、作業時間の短縮になるのはBIMの大きなメリットですね。

  • 小野:2Dの作図からBIMソフトへ移行する際に苦労しました。BIMソフトに備えられた多種多様な機能をスムーズに使えるようになるためには、社内での勉強会に加えて、より多くのプロジェクトでBIMを使用し、習熟する必要があると感じています。当初は社内のBIMマネージャーの協力を仰ぎ、ファミリ化と並行しながらプロジェクトを推進していました。デザイン提案から行うプロジェクトでは、新たにファミリの作成が必要になるので、その分時間がかかります。ただ、什器や壁の仕様が決まって一度ファミリを作っておけば、店舗ごとにアレンジできるようになり、作業時間を短縮できます。ポイントは関係者間でBIMソフトの運用ガイドラインを統一すること。それができると関係者間での情報共有がより円滑になり、意思決定や確認のスピードアップにつながるのではないでしょうか。
(※1)ファミリ:Revitでモデルを作成する際の、壁や家具などの建物・内装を構成する部品のこと
(※2)テンプレート:データ内での共通事項(図面枠や見え方など)を統一できる機能

【2】仕組みづくりと関係者間の情報共有が推進効率化の鍵。

クライアントや協力会社を含めたプロジェクト内でのルール決めなど、社内外で足並みをそろえて推進する必要があるんですね。その調整をしながらも、BIMを導入することで得られる効果はなんでしょうか。

  • 小野:データの一括管理が可能になり、社内でもデザイン部門での作図だけでなく、制作部門での発注管理や設備設計との連携が進むことでBIMの恩恵を最大限引き出せると思います。

  • 鶴岡:社内連携がより進めば、作図から金額の算出までの時間短縮が見込め、予算の早期把握などクライアントの満足度の向上に寄与できるのではないでしょうか。また、パーツの数量管理や情報管理をクライアントも含めて行うことができるようになると、将来的には双方の生産性の向上につながると思います。

  • 小野:最初にファミリを丁寧に作成すれば、数値入力だけで寸法や意匠が変更でき、とても便利になります。チェーン展開しているプロジェクトでは共通した什器を使用することが多く、他店舗でもファミリを活用できるため、新たにファミリを用意する手間と時間が省けます。また、汎用的なデザインのファミリ化により、意匠調整やレイアウト作成の時間短縮につながります。作成したデータをプロジェクト内で共有しておけば、急な変更時でも正確な情報が関係者全員に反映されるので、伝達の抜け漏れも減り、今まで個人の経験値で対応していたものも均一化できます。柔軟な人材配置や品質確保が実現できれば、特定の担当者に頼ることなくプロジェクト推進が可能になります。
LAKOLE店舗設計時の作業画面。2Dと3Dが同時に作成される

LAKOLE店舗設計時の作業画面。2Dと3Dが同時に作成される

  • 鶴岡:以前は作図と3D化で異なるソフトを併用していましたが、現在はひとつのBIMソフトで一貫して作業できるようになりました。クライアントとの打ち合わせでも単体のソフトで図面や3Dにお見せでき、修正もその場で反映されるため、理解しやすく、コミュニケーションが活発になります。また、多くのパーツで構成される什器をファミリ化することで、数量管理がより容易になります。

一度データを作成し、プロジェクト内で共通して使用すると、細かい修正なども並行して反映されるので、3Dへの展開をはじめ、設計段階から制作段階へ移行する際の情報共有も正確かつスムーズになるんですね。共通のデザインで迅速な店舗づくりが求められる、多店舗展開のプロジェクトならではの効率化と言えそうですね。

【3】BIMがもたらす、これからの空間づくりとは。

現時点では課題を乗り越えながら、今後を見据えてBIM活用に挑戦していることがわかりました。ディスプレイ業におけるBIM活用について、これからどのような展開が予想されますか?

左が鶴岡、右が小野"
  • 小野:データの一括管理が可能になり、社内でもデザイン部門での作図だけでなく、制作部門での発注管理や設備設計との連携が進むことでBIMの恩恵を最大限引き出せると思います。

  • 鶴岡:社内連携がより進めば、作図から金額の算出までの時間短縮が見込め、予算の早期把握などクライアントの満足度の向上に寄与できるのではないでしょうか。また、パーツの数量管理や情報管理をクライアントも含めて行うことができるようになると、将来的には双方の生産性の向上につながると思います。

業務効率化や生産性向上を目指して業務のDX化が求められる中で、業界を越えたBIMの連携は今後必須になるのではないでしょうか。ディスプレイ業界におけるBIM活用のトップランナーになるべく、運用の幅を広げ、より良い空間づくりに役立てていきたいですね。

【未来に向けたBIM導入の必要性】

施設内のさまざまな情報管理、3Dでの作図による図面の正確性の向上、図面から積算までの一気通貫による生産性向上に加え、商品の在庫管理から店舗のメンテナンスに至るまで、BIM活用の可能性は多岐にわたります。この先、ショッピングセンター等のデベロッパーや施設管理事業者、制作に伴う施工会社などへの普及がさらに進み、CADからBIMの時代へ加速していくと考えられます。 丹青社ではBIMによる空間づくりのプロセス変革は、環境・社会・経済の向上に寄与すると捉えています。しかし、すべての都市や建築BIMから、ディスプレイ業界の空間づくりまでを連続的にとらえた統合データとしてのBIM活用を拡げるためには、事業者をはじめ、ゼネコン、設計者、専門工事業者、メーカー等、建築・ディスプレイ業に携わるすべての関係者のさらなる連携・推進が必要です。業界を越えてBIMを空間づくりの川上から川下まで活用することで、空間づくりの更なる可能性の拡大や業界の発展につながればと思います。


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関連動画

(YouTube「丹青社公式チャンネル」より)

※記載されている情報は、取材時点のものです。その後予告なしに変更されることがありますので、あらかじめご了承ください。

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