佐々 瑛里奈株式会社丹青社 デザインセンター プランニング局 1部 1グループ プランナー
大学卒業後にデザイン事務所に入社し、約6年間デザイナーとして勤務。2021年に丹青社へ入社し、商業空間のプランナーに転身。施設のコンセプトや再開発の方向性、マスタープランの検討などを手がける。建築やデザインの経験を生かしながら、空間と事業の両面から商業施設のあり方を描いている。
たのしそうな人で在り続けたい
20年後の丹青社創業100周年を見据えた特別企画ということで、未来から逆算してお聞きしたいと思います。2046年に、どんなことを実現していたいですか?
私が20年後に目指したいのは、周囲から見ても「楽しそうな人」で在り続けることです。先ほども上司との面談で「仕事を楽しむのが上手だよね」と言われたんですが、私自身、楽しむという意識は常に持っていて。もちろん、仕事はいつでも楽しいことばかりではありません。難しい課題に向き合わなければならないときも、思うように進まず苦しさを感じるときもあります。それでも、目の前の仕事のなかに自分なりの面白さを見つけ、前向きに関わっていける余裕は失いたくないんです。
そう考えるようになった背景には、デザイナーからプランナーへ転身した直後の経験があります。6年間続けてきたデザインの仕事を離れて新しい職種に移った私は、何をするにも一から教わる状態になり、与えられた仕事を進めることに精いっぱいになっていました。以前のような残業続きの働き方ではなくなったはずなのに、仕事への手応えは薄れ、「自分はプランナーに向いていないのではないか」と思うこともあったほどです。そんなとき、上司から「デザイナーを6年経験した自分と、プランナーになって2年の自分を比べても仕方ない。6年続けたときにもう一度考えてみればいい」と言われて。その言葉をきっかけに振り返ってみると、仕事を楽しめないのではなく、経験の浅い自分は苦労して当然だと思い込み、楽しもうとすることまで自分に禁じていたのだと気づきました。そこで、まずは仕事への向き合い方を変えてみることにしました。調査で興味深い事実を見つけたら、なぜ気になったのかを掘り下げてみる。自分の関心を起点に、提案に生かせることがないかを考えてみる。そうやって一つひとつの仕事のなかで自分が楽しめる部分を探すようにしたのです。すると、自分なりの考えを持って関われる場面が少しずつ増え、仕事にも楽しさを感じられるようになりました。
20年後の姿を、「たのしむ人」ではなく「たのしそうな人」としたのは、仕事の楽しさを自分のなかだけにとどめず周囲にも広げていきたいからです。上司が生き生きと仕事に向き合っていれば、部下も自分の将来を前向きに思い描き、「仕事は楽しんでいいんだ」と思えるはずです。一方で「忙しくて眠っていない」「これだけ苦労した」といった話ばかりが積み重なると、辛さに耐えることが仕事の価値であるかのような空気が生まれてしまいます。私自身、周りの人が楽しそうに働いていると安心しますし、自然と前向きな気持ちになれるんですよね。自分が楽しむ姿が誰かの気持ちを少し明るくし、前向きに仕事へ向かうきっかけになっていく。そんな存在を20年後までに目指したいです。
楽しむために必要な「接点」の幅を広げていきたい
そうした創業100周年に向けた構想を実現するために、それまでの歩みの中でどんなことをしていきたいですか?
仕事の楽しみ方は人それぞれだと思いますが、私が楽しいと感じるのは、目の前の課題に対して頭がフル回転しているときです。これまでの経験や新たに得た情報などを総動員させて全力で挑むとき、いわば脳汁が出ているときです(笑)。そこまで深く入り込むには、誰かに言われたからやるのではなく、自分がこの仕事をやるんだという意識を持たなければなりません。そしてその意識を生むために必要なのが、仕事を自分ごととして捉えることだと思います。土地に縁がある、扱うテーマに関心がある、施設を使う人の気持ちを自分の経験から想像できる。どれほど小さなことでも、プロジェクトとの間に自分なりの接点が一つ見つかれば、仕事は誰かから与えられた課題ではなく自分がより良くしたいものへと変わっていきます。そのため、自分とプロジェクトを結ぶ接点を少しずつ増やしていくことが、仕事を楽しみ続けるために大切だと考えています。
私は一つの分野を深く突き詰めるというより、さまざまなことに興味を持つタイプです。深く狭くより浅く広く。しかし、その小さな興味が自分と案件との間に接点を生み出すことにつながる場合も少なくないんです。自分とのつながりが見つかると、仕事への向き合い方は大きく変わります。例えば商業施設の案件であれば、普段から好きな洋服や化粧品の買い物をしている経験から、自分にも関係がある空間だと捉えられるようになる。ほんの一つでも本心から好きだと思える部分があれば、プロジェクトは他人事ではなくなり「もっと知りたい」「より良くしたい」という気持ちが生まれます。
ただし、そうした接点はインターネットで情報を集めるだけでは十分に育ちません。前職では仕事に追われ、話題の施設へ足を運ぶことも、ゆっくり買い物をすることもほとんどありませんでした。一方で商業空間のプランニングは、人々が日々をどのように過ごし、何に心を動かされるのかを考える仕事だと思っています。そのため、自分自身が街へ出て、空間を使い、そこで生まれる感情を味わうことが必要不可欠だと思います。とはいえ年齢や生活環境が変われば、利用する施設や時間の過ごし方、心を動かされるものも変わっていくので、40代、50代になっても実際に街へ出て、そのときの自分が関心を持つ場所を訪れたり新しい過ごし方を試したりしながら、案件との接点になり得る種を集めていきたいです。
仲間が夢中になれる環境をつくることも、自分の楽しさに
丹青社が創業100周年を迎える2046年、それに向かうまでの構想をお聞きしました。さらに直近で取り組みたいことはありますか?
現在はプロジェクトを動かす立場になる機会が増え、自分の考えがかたちになっていくことに大きな楽しさを感じています。これからはその楽しさを自分だけのものにせず、周囲の人が夢中になって仕事に取り組む姿にももっと喜びを感じられるようになりたいです。そのためにつくりたいのは、一人ひとりが「この部分は自分だから任されている」と思える役割を持ち、自分なりの興味や責任をもってプロジェクトに関われるチームです。
現在の上司は、自らプロジェクトを力強く進めながらも、若手がアイデアを出せる余地をつくり、それぞれが仕事を自分のものとして捉えられるようにしています。その姿を見ているうちに、周囲に仕事を任せることは単に手を離すのではなく、その人の強みや関心が生きる場をつくることなのだと学びました。デザイナーからプランナーへ転身したときの私がそうだったように、新しい仕事に向き合うときには、自分の力を発揮できず、不安を感じることもあると思います。そんなときに、その人なりの楽しさを見つけるきっかけをつくることも、経験を重ねた自分だからこそできる役割だと思います。そうした支えの先で、一人ひとりが自分の視点や強みを生かしてプロジェクトに夢中になれば、その姿は私にとっても新たな刺激や喜びになるはずです。自分が楽しむだけでなく、誰かの楽しさに触れることで、自分の楽しさもさらに広がっていく。その積み重ねが、20年後に目指す「楽しそうな人」の姿をより豊かなものにしてくれるだろうと思います。
まずは、今日の打ち合わせで一度笑ってもらいたい
それでは最後に。100周年に向けた構想を実現するために、まずは今日から始めたい、創造の第一歩を教えてください。
まずは、今日の打ち合わせで一度、みんなを笑わせてみたいと思います。今でも、チームで意見を出し合うときには、あえて「今、こんなことを思いついちゃったんだけど、聞いてくれる?」と、少しくだけて話し始めることがあるんですよ。最初から完璧な意見として示すのではなく、思いついたばかりのアイデアとして投げかけることで、周囲の人も「それなら自分も話してみよう」と、自分の考えを口にしやすくなるからです。こうした振る舞いは、これまでは意見を引き出すために意識してきましたが、今日はさらに一歩進めて、打ち合わせを終えたときに、みんなに楽しかったと思ってもらえるような振る舞いをしていきたいです。
もちろん、笑わせること自体が目的ではありません。一度笑いを生むことで張りつめていた空気をほどき、より実りある打ち合わせにすることが目的です。その結果、一人ひとりが気負わずに会話へ加わり、自分もこのプロジェクトをつくる一員なのだと感じられる場をつくりたいですね。仕事そのものをすぐに楽しいものへ変えることは難しくても、「この人との打ち合わせでは自然と笑ってしまう」「このチームなら自分の意見を出せる」と感じてもらうことはできる。そんな時間を一つずつ増やしていくことが、周囲の人が仕事の楽しさを見つけるきっかけになり、私自身が目指す「楽しそうな人」へ近づく一歩にもなると思います。
本日はありがとうございました!
創業 100 周年に向けた佐々 瑛里奈の創造ノオト