丹青社の
今を伝える
ウェブメディア

丹青ノオト

瞬時に、リアルに、明るさを反映。パナソニック×丹青社が挑む次世代の空間設計

インタビュー

空間づくりにおいて、イメージをチームで共有することは完成度を左右する重要なプロセスです。しかし、図面やパースだけでは伝えきれない部分があるのも事実。特に照明や自然光の明るさは、設計段階でリアルに表現するのが難しいとされてきました。そうした課題を乗り越えるためにパナソニックが生み出したのが、光環境シミュレーションソフト「Lightning Flow®」。3Dモデル上で瞬時に明るさを反映することで、よりリアルでスピーディな空間設計を可能にするソフトです。BIMの活用に注力している丹青社は現在、このLightning Flow®を導入した空間づくりの最適化に取り組んでいます。今回は両社のキーパーソンたちに、Lightning Flow®の可能性と、そこから考える空間づくりのあるべき姿について話を聞きました。

※BIM(Building Information Modeling)とは
コンピューター上に作成した建物の3Dモデルに、コストや材料、施工方法、維持管理といった情報を紐付け、一つのデータとして管理する仕組みです。設計から施工、運用まで同じデータを活用できるため、業務の効率化や品質向上に寄与します。近年では、建築業界の生産性向上やカーボンニュートラルへの貢献の観点から、世界的に導入が進んでおり、日本でも普及に向けた取り組みが加速しています。丹青社では2020年に全社横断組織である「BIM推進委員会」を発足し、BIM活用に力を入れています。

SPEAKER

高島 深志(中右)パナソニック エレクトリックワークス株式会社
ライティング事業部/エンジニアリングセンター/戦略企画部/光環境プラットフォーム企画開発課
10年以上にわたりLightning Flow®の開発責任者を担うほか、社内外に向けた照明機器提案の質向上の取り組みなども手がける。

佐藤 裕也(中左)パナソニック エレクトリックワークス株式会社
ライティング事業部/エンジニアリングセンター/照明環境デザイン部/内装環境デザイン課
舞台照明の経験を積んだ後、2008年より照明デザイナーとして商業施設、オフィス、展示空間などの照明設計を担当。

土門 真士(左端)株式会社丹青社
バリュープロダクションセンター デジタルクリエイション統括部 DX戦略室 室長
専門店や商業空間の環境デザイン・設計管理の経験を積んだ後、2023年よりバリュープロダクションセンターにて、BIMを基盤としたAI活用や設計データの利活用を推進。デジタル技術による業務プロセスの最適化と、働き方改革の両立に尽力している。

林 紗奈美(右端)株式会社丹青社
デザインセンター 文化・交流空間デザイン局 2部 1グループ クリエイティブディレクター
入社当初から文化施設を担当し、主に博物館の空間設計を手がける。3年ほど前からBIMを活用しはじめ、現在では多数のプロジェクトでLightning Flow®を用いる。

まずは「Lightning Flow®」とはどういったものなのか教えてください。

高島

Lightning Flow®とは、「世界最速の光環境シミュレーション」を目指して開発した建築ビジュアライゼーションソフトです。簡単に言うと、図面上ではなく、3D空間の中で照明や太陽光などの明るさを表現できるツールになります。BIMソフトであるRevit®(※)との親和性も高く、Revit®上で作成した3Dデータに対して照明効果を瞬時に反映し、確認できるのが特徴です。
※Revit®:Autodesk社が提供するBIM用ソフト

土門

これまでは、パース上で明るさをかなり自由に変えられてしまうがゆえに、実際にその明るさが実現できるのか検証できないこともありました。「もう少し明るさを変えたい」「ここに照明器具を置くとどうなるか」といったご要望をいただいても、時に一度持ち帰って照明デザイナーと相談し、器具の変更や設計図の修正を行った上で改めて提案の場を設ける場合もあり、そこにはどうしてもタイムロスが生じます。その上で最終的に変更しなくてよいという結論になれば、その工程自体が無駄になってしまうこともあったんです。その点、Lightning Flow®を使えば照明器具の内容を踏まえた実現性のある明るさを提案できます。また、その場ですぐに3Dモデルに反映できるので、お客さまとの合意形成がしやすくなるのも大きなポイントです。

佐藤

特に丹青社さんが手がけるような大型の空間では、ひとつ照明を変えるだけでもすべてのフロアに関わる調整が必要になるため、膨大な時間がかかることもありますよね。一方Lightning Flow®を使えば、大型空間であっても調整した内容をすぐに反映して見せることができます。つまり、丹青社のデザイナーさんにとっても、私たち照明デザイナーにとっても、これまで調整にかかっていた手間や時間をほかのクリエイティブな業務に充てられるようになる。そこは非常に大きいですね。

使いやすさも魅力のひとつです。話だけ聞くと、複雑な仕様や高度な操作が必要なソフトのように感じるかもしれません。しかし実際は、デザイナーがつくりたい空間を直感的かつ素早く具現化できるツールだと感じています。

高島

そこはかなりこだわったところです。というのも私がLightning Flow®を開発したのは、知識や経験にかかわらず、誰もが使いこなせるソフトにしたいという想いがきっかけだったからです。私自身、長く携帯電話の設計に携わっていたので、照明の部署に異動したとき、照度や分布図の見方がまったく分かりませんでした。社内の人間は当然のように専門用語を使いますが、数字や設計図だけを見せられても、お客さまにはなかなか伝わらないだろうと感じたんですよね。だからこそ、3Dモデルの中で感覚的に照明の状態や違いが分かるソフトをつくりたいと思っていたので、今、林さんからそうした想いに通じる言葉をいただけたのはとても嬉しいですね。

パナソニック 汐留サイバードームにて実寸大でLightning Flow®を体験

丹青社が「Lightning Flow®」を活用するようになった経緯を教えてください。

 

土門

きっかけは、美容機器などの体験型施設である「Panasonic Beauty OMOTESANDO」の改修プロジェクトでした。照明設計を担当いただいた佐藤さんからLightning Flow®のレクチャーを受け、照明のリアルさとレンダリングの反映スピードに衝撃を受けたんです。表現の精度だけでなく、BIMソフトであるRevit®と連携できる点にも強く惹かれました。当時から丹青社内でもBIM推進、啓蒙活動は行ってきましたが、なかなか思うように広がらず、何かデザイナーに響くきっかけになるような事を探していたところに、とても感覚的に操作ができるLightning Flow®に興味を持ってもらうことで、内装に絶対必須の照明シミュレーションをきっかけにしてBIM活用につなげて促進できるのではないかと考え、詳しい話をお聞きすることにしました。

佐藤

丹青社さんは業界の中でも先駆けてBIMを推進しているイメージがありましたし、ぜひLightning Flow®を活用していただきたいと思っていたので、詳しくお話しできたのは嬉しかったですね。使い方をご説明したうえで、具体的にどのようなことができるのかを話し合うために、2024年の春からは定期的な情報交換会も実施するようになりました。

土門さんたちから社内でLightning Flow®やBIM活用について解説してもらううちに、私もLightning Flow®に興味を持つようになりました。もともとRevit®は使っていたのですが、光の調整が難しく、どうしても空間全体がのっぺりしてしまってリアルな雰囲気が伝わりきらないことに物足りなさを感じていたんですよね。その課題をLightning Flow®を使えば解決できるかもしれないと思い試してみたところ、非常に高い精度で光を調整できて驚きました。
また、私は主に博物館の案件を担当しているので、展示物を快適に鑑賞できるか、影が映り込まないかなど設計段階から照明の調整にはかなり気をつける必要があるのですが、Lightning Flow®は実際の照明器具のスペックや仕様を参照して反映してくれるため、お客さまにも安心して見せることができました。「こんなにすぐに反映できるのですか」と驚かれましたね。設計に対するお客さまとの対話を活発にしてくれるという点も、このソフトの大きな魅力だと思います。

高島

ただ、Lightning Flow®は与えられた空間に対して光を計算して見せるソフトなので、単体では空間そのものを3Dモデル化することはできません。つまり、優れたBIMデータがあってこそ、光も活きてくる。今回このようにうまく活用していただけているのは、丹青社さんのBIMデータとかけ合わさったからこそだと思います。

「Lightning Flow®」が活きた、具体的な事例はありますか?

 

さまざまな事例で活用させてもらっているのですが、特に印象深いのは千葉市立郷土博物館のリニューアルですかね。このプロジェクトでは、千葉市のダイナミックな歴史と文化を伝える博物館として、時代ごとの歴史が今日に至るまで脈々と続いていく様子をどう空間で表現するかが大きなテーマでした。特に議論を重ねたのが、1階から5階まで続く「ダイナミックライン」と呼ばれるカラフルな導線の設計です。ラインを解説パネルの真ん中に貫いてよいのか、展示の見え方を妨げないかなどを検証するために、3Dモデル上を実際に歩くようなかたちで確認していきました。その際、Lightning Flow®で正確な光の当たり方や素材感を反映できたおかげで、空間全体のリアルなイメージが湧きやすくなり、お客さまや設計者、各関係者が同じイメージを持ちながら進めることができたんです。

千葉市郷土博物館(「ダイナミックライン」が展示を貫く)

土門

千葉市立郷土博物館の事例は、内装設計においてLightning Flow®がとても有用に活用された、とても良い先行事例になったと思います。照明の見え方を確認するためだけでなく、空間そのものをクライアントも含めて全員の認識を合わせることにもつながり、結果としてプロジェクトをスムーズに進めることができる。そうした価値を体現してくれました。こうした事例が積み重なることで、まわりのデザイナーにも刺激となり、さらに良い使い方を考えるきっかけにもなります。忠実に表現された3D空間を自由に行き来できることで、クライアントの興味や関心具合も高まり、より充実した議論を交わす事で信頼感と安心感も提供できるはずです。

実際、社内の別のプロジェクトのメンバーに千葉市立郷土博物館の事例を紹介したところ、「こんなにリアルに検証できるのか」と非常に反響がありました。今では他の物件でもLightning Flow®の活用が広がり始めています。設計の初期段階からチーム内で完成イメージを解像度高く共有できる武器として、社内でも手応えを感じているところです。

外光が入る空間の見え方検証(左:Lighthing Flow®検証画像 右:実際の空間)

高島

そうしたお話を聞くと、Lightning Flow®をつくった甲斐があるなと感じます。照明設計という一部分にとどまらず、より良い空間をつくっていくことそのものに貢献できればと思っていたので、とても嬉しいです。

最後に、今後の展望について教えてください。

限られた時間の中で満足度の高い空間をつくることが求められる今、こうした良質なソフトを必要としている会社は多いと思います。だからこそ、Lightning Flow®の認知がもっと広がれば、照明に限らず、什器などの設備データもBIMに適した形で世の中に増えていくきっかけになるのではないかと期待しています。そうやってシミュレーションに不可欠なパーツが共通言語として整っていくことで、空間づくりのプロセスそのものが効率化され、多くの人の働き方も変えていける気がします。

土門

そうですね。丹青社やパナソニックさんだけで推し進めようとしても限界があります。業界全体でその動きを活発化していくことがとても重要と考えています。内装業界に関わる関係各社とよりよく連携しながら進めていくべきなので、これまで紡いできたそれぞれのネットワークを活かしながら働き方そのものが変化していくことで、もっとクリエイティブなことに注力しよう、もっと良い空間をつくろう、という本来じっくり時間をかけたいクリエイティブな時間を確保できるきっかけになればと思います。

佐藤

私たちも同じ想いです。修正や調整に多くの時間を使うのではなく、まだないものを生み出すことにもっと時間をかけられるようにして、一緒により良い空間をつくっていけたらと思っています。

高島

今日お話ししていて、あらためて丹青社さんと私たちは同じ方向を向いているのだと感じました。すべては、より良い空間をつくるため。そしてそのためには、より良いワークフローをつくる必要があると思います。内装業界をリードする丹青社さんとともに、ワークフローそのものもどんどん進化させていけたらと思いますし、そうした進化を起こすことにこそ協業する意味があると思っています。

本日はありがとうございました!

紹介実績

Panasonic Beauty OMOTESANDO

住所  東京都渋谷区神宮前4-3-3
営業  11:00~19:00
定休日 毎月第2または第3月曜日、年末年始(12/31~1/3)
実績紹介ページ https://www.tanseisha.co.jp/works/detail/panasonic-beauty-omotesando

千葉市立郷土博物館

住所  千葉市中央区亥鼻1丁目6番1号
営業  9時から17時まで(入館は16時30分まで)
休館日 月曜日(国民の祝日にあたる場合は開館)、年末年始(12/29~1/3)、臨時休館有
実績紹介ページ https://www.tanseisha.co.jp/works/detail/chiba_city_folk_museum

この記事をシェア

関連記事を見る