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飾るだけではない。 想いを込めたアートが空間に与える新たな価値とは? TOYOTA ARENA TOKYO 「アートディレクション」

インタビュー

TOYOTA ARENA TOKYO内のさまざまな空間に散りばめられた数多のアート。それらはただ飾られているのではなく、アリーナの価値を高め、来場者や地域と繋がるための3つのコンセプトから生まれました。本記事では、プロジェクトを担当したトヨタアルバルク東京株式会社の山本さまと、これまでにない領域でアートのディレクションに挑んだ丹青社の中山が対談。アリーナにおけるアートが担う役割、そして空間を体現するアートの価値について語ります。

SPEAKER

山本 靖人(右)トヨタアルバルク東京株式会社 アリーナ事業部 事業企画室 / 室長
アリーナの広報、企画、ICTの基本設計など、ソフト面に近い領域を幅広く担当。アート計画では社内の企画責任者としての役割を担う

中山 麻有(左)株式会社丹青社 プランニング局 チーフプランナー / 認定ワークショップデザイナー
ホテルなどのホスピタリティ空間、商業施設、空港や駅といった公共施設のプランニングを手掛ける。TOYOTA ARENA TOKYOでは、アートディレクションを担当

まず、アリーナにアートを取り入れる「アート計画」発足のきっかけについて教えてください。

山本

きっかけは国内外のスタジアム・アリーナの視察。コンコースやホスピタリティエリア、それぞれの空間で、多数のアートが空間づくりに活用されているのを目の当たりにしたことでした。海外では総工費の数パーセントをアートに投じているという事例もあり、まずはアートにかける予算組みから着手していきました。

中山

丹青社が最初にご相談をいただいたときは、「アートを取り入れるとしたらいくらくらいかかりますか?」というざっくりとしたものでした。日本国内のアリーナやスタジアムなどのスポーツ施設では、空間におけるアートの価値についてまだまだアップデートの余地があると思っており、ただ飾るだけではもったいないという課題意識が私自身の中にもありました。その想いに山本さんも共感してくださり、TOYOTA ARENA TOKYOの想いのこもった、意味のあるアート計画にしようと。そこで、このプロジェクトには絵ではなく言葉を操れる人、コンセプトを言語化できるプランナーが必要だという判断があり、私が参画することになりました。正直、その時はとても不安でしたね。丹青社としては、文化施設などの展示物としてアートを扱うことことはありますが、アートそのもののディレクションは初めてで。社内に経験者がおらず、誰からも教えてもらえないという状況でした。

コンセプトはどのように決めていったのでしょうか?

中山

まず、TOYOTA ARENA TOKYOには「可能性にかけていこう」というコンセプトがあり、建築や内装のコンセプトもそれを引き継いでいます。その上で、丹青社がアートをディレクションする理由を考えると、私たちならそれぞれのコンセプトを途切れさせずにまとられると思ったんです。そうして生まれたのが「語れる、綴られる、共に歩む」というコンセプトです。「語れる」は、TOYOTA ARENA TOKYOのスタッフ自身がアートの背景や文脈、アーティストの想いを語ることができること。「綴られる」は、それを聞いた来場者やアートを目にした方が思わず発信したくなること。そして「共に歩む」については、地域の方々や来場される皆さまと、ともに進化していきたい、共創していきたいという想いを込めました。

山本

一般的に、アリーナは建った瞬間から価値が下がっていってしまうものですが、我々としては、むしろ時間が経つにつれて価値や魅力が増す施設を目指したいと考えておりました。それは、海外のアリーナを見てきた社長や部長から託された想いでもあります。そういった背景もあり、来場者や地域と一緒に新しい価値を育んでいけるような余白を大事にしたいという思いがあったので、「共に歩む」というコンセプトを採用しました。

そこから、どのようにプロジェクトを進めていきましたか?

中山

まずはアートを取り入れる場所の選定から始めました。工事中のアリーナ内を歩き回って、使用できそうな壁や空間を探していく。その後、概算コストを算出して、アートが必要な場所、取り入れたい場所を絞って、目的を明確にしていきました。特に大変だったのは、どの場所にどんなアートを取り入れるかのテーマを決めていくことでした。メンバーそれぞれに想いがあり、たくさんのアイデアが出てくる中で、何を良しとしてどう決めていくべきなのかまとまらなくなってしまって。そこで、私が認定ワークショップデザイナーの資格を持っていることから、1日かけてワークショップを実施したんです。

山本

ワークショップというプロセスをしっかり踏めてよかったと思っています。僕らとしてもアイデアはたくさん出るものの、どこで何を表現するべきなのか、なぜそのアイデアが良いのか、言語化できていなかった。ワークショップを行うことで、全体を俯瞰しながら、各空間で表現すべきことや来場者に伝えるべきメッセージを言語化することができ、「それならこのアイデアがいいよね」という納得解を生み出せました。これによって全員が同じ目線でプロジェクトを進めることができました。

TOYOTA ARENA TOKYOには数多のアートが施されていますが、印象的な作品について教えてください。

中山

今インタビューをしているこの部屋の壁に描かれている田村大さんの『役者と舞台』は特に印象深いです。この部屋には「OEDO」という空間コンセプトがあり、当初から「富嶽三十六景」のイメージはあったのですが、それをアートでどう表現するか悩んでいました。そこで田村さんから「バスケットボールを持った歌舞伎役者さんを描きましょう」と提案がありました。その時に山本さんが「役者と舞台」の話をしてくれたんですよね。

山本

アルバルク東京がアリーナの経営をすることになった背景には、社長の強い想いがあります。これまでのアルバルク東京はさまざまな場所をお借りして活動をしてきたため、どうしても利用上の制約がありました。クラブがアリーナ運営も担うことで、歌舞伎のように「役者と舞台」が一丸となって、お客様へさらなる感動をお届けできると考えてきたんです。この想いをどこかに刻みたいと思っていたので、田村さんの歌舞伎役者を描くというアイデアを聞いて、この部屋がぴったりだと思いました。

中山

クラブとアリーナによる一体経営のアリーナは国内でも珍しいですよね。TOYOTA ARENA TOKYOの想いを田村さんが汲んでくれて、歌舞伎役者と舞台、そしてバスケットボールが描かれたこの絵が出来上がりました。ここのテーマが決まったときが一番気持ちよかったですね。みんなで「これだ!」ってなりました。

東京の下町文化を連想させる空間の「OEDO」

田村さんを含めたアーティストはどのように選定していったのですか?

中山

田村さんについてはアルバルク東京さんからご紹介いただいたのですが、他のアーティストの方は主にキュレーターを介して選定しました。アーティスト選定で一番大事にした基準は「アルバルク東京のことを好きになってくれるかどうか」。具体的には、試合を見にきてくれる、クラブのことをちゃんと理解しようとしてくれる方です。アルバルク東京の想いを表現するアーティストとして、そこは譲れない基準だと思っていました。その上で、アーティスト選定や描く内容を含めて、山本さんをはじめとするアルバルク東京の皆さんと一緒に悩みながら作っていきました。

山本

自分たちも納得のいく空間を作りたい気持ちが強くあって、そのためには丹青社さんの協力が必要不可欠だと思っていました。だからこそ、アルバルク東京の想いとしてすべて伝えていきましたし、そこから丹青社さんが提案してくれたことで新たな気づきを得ることもありました。

中山

本当にアルバルク東京さんと一緒に作っているという実感がありました。今回のプロジェクトを通じて、空間にアートを取り入れる意味を高い解像度で理解できたと思っています。空間コンセプトは来場者さまに伝わりにくいものですが、アートがあることで想いが伝わりやすくなると感じましたね。アートはただ飾るものではなく、空間コンセプトを体現する総仕上げになるものだと学びました。

最後に、TOYOTA ARENA TOKYOの今後の展望について教えてください。

山本

お客さまに飽きられない、新しい発見のある施設づくりをしていきたいと思っているので、TOYOTA ARENA TOKYOの設備や敷地を活かした自主興行を企画して、自分達にしかできないエンターテイメントを提供していきたいと考えています。ぜひご期待ください!

中山

このプロジェクトを経て、丹青社がアートのディレクションをする意味を理解できたので、ほかの物件でも活かしていきたいです。また個人的には、予算や工期の都合で諦めざるを得なかったアートを、ひとつでも実現したいと思っています。特に一般コンコースにはまだ一箇所しかアートがないので増やしていきたいです。ワークショップの中でもせっかくいいアイデアがたくさん出ていましたし、こうして見ると「まだ使える壁いっぱいあるやん!」と思っているので(笑)。

山本

今後、中山さんが来るときは壁を隠さないとですね(笑)。

本日はありがとうございました!

施設情報

TOYOTA ARENA TOKYO

住所 東京都江東区青海一丁目3番1号
ウェブ https://www.toyota-arena-tokyo.jp/
実績紹介ページ TOYOTA ARENA TOKYO 『ART DIRECTION』

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