リニア・鉄道館

ニッポン・システム総合力 頂点がここにある

大空間の「車両展示エリア」。車両をV字にレイアウトし、高速鉄道のスピード感を表現した

2011年3月、愛知県名古屋市にオープンした「リニア・鉄道館」は、東海道新幹線を中心に、蒸気機関車から超電導リニアまでの展示を通じて、日本の高速鉄道の進歩を体感できるミュージアムです。実物車両や鉄道ジオラマはもとより、多彩な切り口で鉄道の魅力を伝えるとともに、高速鉄道の技術や社会的意義を学習できます。

リニア・鉄道館は「鉄道の技術やデザイン、歴史的意義、産業的側面、情景といった鉄道の横顔も感じ取ってもらえる場を実現したい」という東海旅客鉄道㈱様の想いをもとにスタートしました。これまでのミュージアム・プランニング/マネージメントの豊富な実績を評価頂いた丹青社は、基本計画段階から参画しました。短期間に図面やCG、模型を使って何十案もの車両レイアウトを提案し、お客さまと一緒になって議論を重ね、より最適な展示空間を導き出していきました。このミュージアムの実現に向けた展示設計・制作プロジェクトをご紹介します。


事例概要

高速鉄道技術の進歩を実感し、鉄道が社会に与えた影響を子どもから大人まで多彩な切り口で学習できるミュージアムです。展示物は、歴代の東海道新幹線・在来線から次世代の超電導リニアに至る実物の車両、精緻な鉄道ジオラマ、運転・車掌シミュレータ、鉄道のしくみ、体験展示、歴史展示などで構成されています。

課題/テーマ

①高速鉄道技術の進歩と社会への貢献を伝えること。
②子どもたちが鉄道技術や鉄道と社会の結びつきを学べる場とすること。

解決策/実現策

①世界最高速度を記録した3両をシンボルとして、29m幅の大型映像と連動した演出を図り、車両の進化と、社会に貢献した意義をアピール。車両展示エリアでは高速鉄道技術の進歩をイメージできるようにV字型に車両をレイアウトしました。また、0系と300系新幹線の台車やモータ、パンタグラフの比較を通じて技術進歩を体験的に理解できる展示や、車両や軌道の保守についても十分なボリュームを確保し、高速運行を支えている人や技術も紹介しています。
②鉄道技術を体験装置で実感してもらうとともに、高速鉄道技術の進歩と社会との関わりが理解できるよう歴史的な展開を資料や映像で展示しました。

環境配慮設計

視覚障がいをもつ方が気兼ねなく触れるよう、蝕知しやすい解説パネルを製作。音声ガイドは8か国の多言語(日・英・中・韓・仏・独・スペイン・ポルトガル)対応しています。

事業主
東海旅客鉄道株式会社
業務範囲
基本計画、展示デザイン・設計、展示制作・施工
当社担当者
ディレクション:和田 明彦
プランニング:建石 治弘、関本 幸乃、春日 仁
デザイン:小山 将史、吉田 康寛、石渡 美穂
特殊造形(ジオラマ)デザイン:中井 弘志
制作:加藤 勝美、三澤 彰生、後藤 洋一、中川 孝浩
渉外:鶴岡 誠、酒井 一成、佐藤 順治
受賞情報
「ディスプレイ産業賞2011」ディスプレイ産業大賞
「ディスプレイデザイン賞2011」入選
「第45回SDA賞」入選、中部地区デザイン賞
所在地
愛知県名古屋市港区金城ふ頭3丁目2番2
オープン
2011年3月
ウェブサイト
https://museum.jr-central.co.jp/

車両の意義を引き出す展示

リニア・鉄道館には、世界最高速度を記録したC62形式蒸気機関車、新幹線試験電車(300X)、超電導リニアMLX01-1の3車両がシンボル展示と位置づけられています。加えて歴代の東海道新幹線、在来線を含め、合計39両の実物車両が展示されています。こうした実物車両の社会的意義、技術的意義を引き出す展示が求められました。

高速鉄道は都市間交通として、時代ごとに、経済・文化・生活など世の中に貢献しており、その社会的意義は小さくありません。また在来線は都市圏交通という役割の中で、身近な暮らしを支えてきました。こうしたことを鉄道事業者であるお客さまが伝えたい、という要望に応えられるように、意義を引き出し、その意義にふさわしい演出を図りました。

シンボル展示の3車両は、それぞれ世界最高速度を記録した車両です。時代の要請の中で技術に裏付けられたこれらの車両はレコードフォルダーとなりました。その輝かしいシンボル性を引き出すために私たちが計画したのは、巾29mに及ぶ大型映像、その映像と連動して車両ごとにフューチャーする照明演出、そしてこれらの演出がより効果的に生かせるように「暗」の空間デザインとしました。

そして19両の実物車両を展示する車両展示エリアでは、高速感を引き出すためにV字レイアウトにこだわりました。先頭部を少しずつズラし、進化をイメージできるようにレイアウトすることで、東海道新幹線と在来線の車両群を引き立てる演出を図っています。

これらの車両展示においては、当社がプラットホームを展示設計の一環として担当したことも、車両の存在感を大きく引き立てることに貢献しました。展示資料である実物車両を「魅せる」だけにとどまらず、車内見学のしやすさや、車両との位置関係から感じられるリアルさ、ガラスを用いたパーティション、そしてユニバーサルデザインや安全面にもこだわった見学のための動線など、細やかな部分まで配慮を詰め込みました。

そしてこのシンボル展示と車両展示エリアは「明暗」のコントラストを強調した空間デザインとしました。演出によって意義を引き出せるようにしたシンボル展示の「暗」、トップライトによる自然な美しさを引き出すための「明」、この二つの空間で構成することで、全体としてのコントラストを強調するとともに、空間の性格を差別化しました。来館者の方々を、明るいエントランスからシンボルの「暗」、そして車両展示エリアの「明」に導くことで、感動できる空間を実現できたと自負しています。

シンボル車両を際だたせる「暗」の空間

展示車両のアウトラインカットと解説を点字にした触知図

精緻でリアルな情景で魅せる「鉄道ジオラマ」

もう一つの大きなミッション、それは精緻でリアルなシーンで構成した、国内最大級の鉄道ジオラマを創ることでした。レールレイアウトや建物模型を主体とした既存の鉄道ミュージアムのジオラマには飽きたらず、鉄道とともにある生活シーンを多数のフィギュアとともに再現し、多くの来館者に楽しんで頂けることをお客さまは目指しました。そこで、東海旅客鉄道㈱様とプロジェクトチームが一丸となって、鉄道ジオラマの企画、設計、製作に取り組み、数々の課題を克服してきました。

企画・設計2年、製作1年を要した鉄道ジオラマには多くの特徴があります。

ガラスで覆わないオープンなジオラマ、東海道新幹線16両フル編成、夜間保守シーンも再現した鉄道の24時間…、特に自主開発したデジタル運行システムが重要な役割を担っています。デジタル制御だからこそ、1路線の中で複数の編成を自在に走行させることができます。そしてこのシステムをプラットホームとすることではじめて、照明や映像、音響、全ての演出を統合して制御することができるようになりました。

東海旅客鉄道㈱様のミュージアムである以上、東海道新幹線16両フル編成は欠かせません。しかしスケールから計算すると、驚くことにその長さは約5mに及びます。フル編成が停車するホームもまたその長さに合わせたものとなります。結果、ジオラマの中心で名古屋駅は強い存在感をアピールしています。そしてプロジェクトチームが名古屋アクションと呼んでいた演出があります。名古屋駅に次々に到着し発進していく新幹線の状況、デジタル運行システムならではのリアリティーのある再現が実現しました。これもまたこだわりの一つとなりました。お客さまは言わずもがな、鉄道運行のプロです。そのプロのご担当さまに車両模型の運行ダイヤを計画して頂きました。こうしたこともまた、リアリティーのある鉄道ジオラマが成功した大きな要因です。

そしてフィギュアが魅せる情景の数々。野球場やコンサート会場を埋め尽くすフィギュアは圧巻です。町中の情景を再現したシーンは、どこかで見たことがあるものから、お伽噺のシーンなど、どこを見ても遊び心溢れ、楽しさを満喫できるものとなりました。こうした魅力が好評を博し、ついにはその成果が実を結び、『公式 鉄道ジオラマガイド』の出版に至りました。当社と協力会社の㈱ヤマネとで協同出版し、リニア・鉄道館のミュージアムショップで限定販売しています。家族連れや女性の方々にもお買い求め頂けるほど人気と聞いています。

精緻でリアルな鉄道ジオラマ:どこを見ても楽しいシーン

当社と㈱ヤマネで協同出版した『公式 鉄道ジオラマガイド』:ミュージアム・ショップで販売中

超電導リニアをプロモーションするミュージアム

企業ミュージアムには、自ずとプロモーション的性格が期待されます。東海旅客鉄道㈱様の場合、それは新幹線であり超電導リニアです。安全、安定輸送の新幹線システムはもとより、すでにスケジュールが現実的になった超電導リニアに関する展示は、お客さまの意気込みが現れています。

開館を5ヶ月後に控える10月末に、営業車両仕様として超電導リニア車両「L0系」が発表されました。超電導リニアに関する展示は、この発表を待って、L0系の姿を表現することに注力しました。お客さまはこの車両がどうあるべきかという課題に取り組まれていましたので、それをリニア・鉄道館で再現することが求められました。

ストーリー構成を幾度となく検討し、CGを描き替え、指導を受けながら車内での振動の再現テストを繰り返しました。こうした試行錯誤の結果、超電導リニアミニシアターは完成しました。そこでは、車窓から見える風景、走行中の小さな振動が、時速500kmで走行する超電導リニアだからこそできる体感を実現しています。こうしたことが東海旅客鉄道㈱様のネクストステージに寄与しています。

また、空間デザインのキーカラーとなる新幹線のブルーも施設の特徴となっています。初代東海道新幹線0系のデザインの斬新さは、白いボディにブルーのラインでした。モデルチェンジしていった100系、300系、700系、N700系、そして超電導リニアのL0系に至るまで、このカラーは東海旅客鉄道㈱様の高速鉄道のアイデンティティーとなっています。

リニア・鉄道館のキービジュアルで、このカラーを逃すわけにはいきません。目に入るサイン、グラフィック、映像コンテンツ…これらに新幹線のブルーをキーカラーに活用し、空間全体でそのアイデンティティーを演出しています。濃いブルーと淡いブルーで構成したロゴマークにも反映しています。

エントランスを飾るロゴマークも当社作品

ミュージアムとしての使命を誇るリニア・鉄道館

一般の方々の鉄道への理解を深め、広く社会に貢献するとともに、産業界の成長発展に寄与する空間デザインが認められ、2011年ディスプレイ産業大賞 <経済産業大臣賞>の受賞に結びつきました。そして、リニア・鉄道館の来館者は開館1年を待たずして100万人を突破し、東海旅客鉄道㈱様の内外をはじめ、当社内外でも話題になるにつれ、その意義の大きさを実感できるようになってきました。

これらのことは、ミュージアムが人類の到達点を共有化する仕組みであることを私たちに再認識させてくれました。その到達点を記録し読み解き、多くの方々と共有できてはじめて、未来に寄与できるミュージアムになるのだと思います。特に3.11の東日本大震災は、モノやコトをキチンと保存し継承し共有するミュージアムの大切さを痛感させてくれました。

遥か歴史の彼方から伝えられた遺産、壮大な自然の中から人智が僅かに見いだした不思議さ、未来を視野に入れた科学技術、人間の本質をメディアに落とし込んだ文学やアート、民芸作品、暮らしに息づき工夫の込められた道具の数々…叡智が刻まれたこれらのモノとコトはまぎれもなく人類の到達点です。

レコードフォルダーの実物車両をはじめ、鉄道の社会貢献、そしてそのシステム総合力で日本が先駆けて実現した高速鉄道、こうしたモノとコトを展示するリニア・鉄道館は、まさに人類の到達点を共有化できるミュージアムです。このような仕事に関われたことが私たちの誇りとなっています。

0系と300系の比較をはじめ、高速鉄道の技術と保守を伝える「鉄道のしくみ」

撮影:フォワードストローク


プロジェクトメンバー

ディレクション:和田 明彦
プランニング:建石 治弘、関本 幸乃、春日 仁
デザイン:小山 将史、吉田 康寛、石渡 美穂
特殊造形(ジオラマ)デザイン:中井 弘志
制作:加藤 勝美、三澤 彰生、後藤 洋一、中川 孝浩
渉外:鶴岡 誠、酒井 一成、佐藤 順治

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