旧高宮貝島家住宅 高宮南緑地 「高宮庭園茶寮」
歴史的価値を継承するとともに、地域創生につながる憩いの場に再生
伝統的な和風建築で建てられた「旧高宮貝島家住宅」。メインエントランスは残っていた接客用玄関を用い、外壁は当時のマテリアルであった白漆喰と黒漆喰のコンビネーションを復元した。
事例概要
福岡市高宮の住宅地に位置する「旧高宮貝島家住宅」は、麻生・安川とともに「筑豊御三家」と称され、「炭鉱王」と呼ばれるほど隆盛を誇った貝島家の邸宅です。地域の企業を中心に設立したコンソーシアムと協力し、官民連携でプロジェクトを推進。広大な庭と未使用だった個人建造物を日本文化・歴史・自然と現代を融合させ、地域住民が関わる都市公園として再構築しました。
課題/テーマ
福岡市登録文化財である「旧高宮貝島家住宅」の歴史的価値や貴重な樹林地を保全し、未来に継承するとともに、地域住民に親しまれる都市公園として、また、観光資源として来街者も日本文化が体験できる、もてなしや交流の場とすること。
解決策/実現策
残された住宅の復元に加え、新たなサービスを提供する建物を建設。住宅はお茶や食事などを小規模で楽しむ場として、当時の手法で意匠を再現しながら随所にモダンなデザインを取り込み、新設した建物は結婚式やセミナーなど大勢を招くことができる場として、倒壊した建物の木材や瓦も再利用しつつ色合いや素材の調和を図りながら空間を設え、新旧建物の融合を果たしました。自然と建物の調和も意識し、庭は四季の移ろいを考慮した樹木選定をおこない、周囲の景色を借景として楽しめる空間としました。また、都市公園としての役割を担うため、目的がなくとも四季散策を楽しめる回遊性のある動線計画を施しています。
環境配慮設計
リサイクル材料:取り壊しになった蔵の瓦や既存の壁紙をできる限り再利用し、当時の手法をなるべく残すように計画しました。
省エネ設計:照明は全てLED、タイマー調光を用い、住宅は当時の趣を大事にしながら、必要最低限の照明計画をおこなっています。
リユース設計:使われていなかった家具や什器を今回のトーンに合うようにリメイク、張地のアレンジを加え、再利用しました。
ユニバーサルデザイン:都市公園法の設計基準に則って、柵の寸法やグリップのサイズを設定しています。
文化財保存設計:建具など再利用できるものはそのまま利用し、今できうる手法で建築当時の様子を復元しました。また、本プロジェクトは文化財を一般に公開し、活用し続けることで、継続的にメンテナンスされる状態を維持することを意図しています。
- 事業主
- (株)ポジティブドリームパーソンズ
- 業務範囲
- 建築設計:(株)環・設計工房
建築施工:九州建設(株)
園地整備:(株)都市造園
全体ディレクション、施設コンセプト企画、全体デザイン監修、デザイン・制作・施工(迎賓館・ミュージックホールの内装、外構サイン):(株)丹青社
- 当社担当者
- クリエイティブディレクション:小出 美希
デザイン・設計:小出 美希、藤原 祥子
制作・施工:佐竹 敬司、五ノ井 菜摘
プロジェクトマネジメント:村上 爽子
- 受賞情報
- 「第41回ディスプレイ産業賞(2022)」奨励賞 (日本ディスプレイ業団体連合会賞)
- 所在地
- 福岡県
- オープン
- 2022年4月
撮影:株式会社ピップス
クリエイティブディレクション、デザイン・設計
小出 美希
クリエイティブディレクション、デザイン・設計
小出 美希
アパレル・食物販・レストラン・ホテル・オフィス・リノベーションなど、多岐にわたるフィールドでプロジェクト推進を経験。自己領域を限定することなく、人を取り巻くさまざまなフィールドを探り、そこでどんな体験価値を提供できるかを考え活動している。近年は文化財リノベーション経験を活かし、再生プロジェクトも推進。健診センターや大型商業施設にも領域を広げている。
デザイン・設計
藤原 祥子
デザイン・設計
藤原 祥子
飲食・物販・ホテル・ブライダルなどのデザインを担当。高架下活性化事業、建物リプランニング事業など、歴史的建造物を新しいシーンへと創出する事業に多く携わる。最近では教育施設や健診センターも手掛けている。
※実績紹介に記載されている情報は、掲載時点のものです。その後予告なしに変更されることがありますので、あらかじめご了承ください。