熊本城天守閣
「復興のシンボル」として、災害の度に修復してきた人々の思いとその歴史を伝える
小天守地階「穴蔵」入口:壮厳な雰囲気を演出し、入城の期待感を高める配置とした映像演出。
事例概要
2016年4月の熊本地震は熊本城天守閣にも被害をもたらしました。シンボルである天守閣が元の姿に戻ることを切望する人々の声を受け、熊本市は天守閣の早期復旧を方針に掲げ、建物は最新の耐震技術を取り入れ、2021年3月に完成しました。ここには、築城以来400年間、繰り返される災害の度に修復してきた人々の思いが引き継がれ、これからの100年、400年の未来に向け、“今”を生きる熊本の人々からのメッセージが込められています。
展示は、地下から最上階まで時系列にテーマ構成し、それに対応した空間デザインを図るとともに、模型や映像、壁面デザインなどで、わかりやすく印象的な空間を実現しました。城全体ではなく天守閣を中心とし、築城時の歴史、建築意匠、防御機能、城と町づくり、さらに被ってきた災害の度に修復してきた人々の思いとその歴史を伝えています。
課題/テーマ
・熊本地震被災からの復旧のシンボルである天守閣において、天守閣の持つ歴史的、建築的、精神的意義を発信すること。また、歴史的にも数多くの自然災害に見舞われてきた熊本城が、今般の地震でも再び甦ったことを発信すること。
・熊本城全体ではなく、“熊本城天守閣”に焦点をあて、周辺施設の展示内容と役割分担、連携・補完を図ること。
・天守閣内は保存環境の制約が多いため、基本的には実物資料の展示は行わず、従来はなかった西南戦争以降の熊本城天守の歴史展示を追加すること。
・ユニバーサルデザインの観点から、触れる展示、多言語音声ガイドなどを導入し、幅広い層の方に展示を楽しんでいただけるようにすること。
解決策/実現策
天守閣を主役とし、築城から現在まで、時間軸に沿ったストーリーに整理し、各階で時代ごとのテーマを設定しました。築城した加藤清正の時代を1階に、その後の藩主となった細川時代、全焼と再建を経験した近代、そして熊本地震とその復旧に尽力する現代と、下階から上階に向けて時代を追えるようにストーリーを整理しました。また、天守閣という建築物もさることながら、江戸時代から度重なる災害でも、その度に修繕してきた人々の「熊本城を元に戻し、後世に伝えたい」という強い意志を発信するため、映像などではそこに焦点をあてて構成しました。さらに、幅広い来城者に応えるために、多言語の音声ガイドや触って形のわかる天守閣の触知模型などを計画し、実現しました。
- 事業主
- 熊本市
- 業務範囲
- 乃村・丹青特定業務委託共同企業体:企画、デザイン・設計、サイン・グラフィックデザイン、什器制作、コンテンツ設計・制作、制作・展示施工、制作・内装施工
※企画、デザイン・設計は(株)大林組の下請け
- 当社担当者
- 企画:建石 治弘、山田 淳 / 丹青研究所 塩田 達郎、吉谷地 華子
デザイン・設計:諸星 和則、高橋 賢治
造形:中井 弘志
装置:丹青研究所 塩田 達郎、吉谷地 華子
電気:小倉 義蔵
制作・施工:阪田 宏治、荒若 徳
プロジェクトマネジメント:中川原 謙二、辻 隆裕
- 受賞情報
- 「第55回日本サインデザイン賞」 銅賞、九州地区賞
「日本空間デザイン賞2021」 ショートリスト
- 所在地
- 熊本県
- オープン
- 2021年6月
撮影:YASHIRO PHOTO OFFICE
企画
建石 治弘
企画
建石 治弘
博物館の展示を中心に、計画段階から施工段階まで、プランナーとして一貫して担当。歴史、科学技術、交通、防災など幅広いジャンルの展示施設や企業ミュージアムで、お客さまの期待に沿った空間を実現してきた。情報バリアフリーにも積極的に取り組んでいる。
※実績紹介に記載されている情報は、掲載時点のものです。その後予告なしに変更されることがありますので、あらかじめご了承ください。